風邪をひく




風邪をひく。
足を痛める。
腰痛も少し悪化した。

季節の変わり目とはいえ、立て続けにこうも見舞われるとくさくさとしてくる。確実に歳を取ってきている。風邪の治りも遅い。そんな自分の身体に苛立ちも覚える。
このところ連日の雨でストレス解消に最高だった自転車トレーニングも出来ず、次第に身体もたるみ、醜くなり、そんな自分にまた苛立つ。

自分の周囲には、風邪をひこうが、怪我をしようが、睡眠不足だろうが、動き続ける人が幾人かいる。
それはバイタリティに溢れているようで、一時うらやましくもあった。
現に二十代の頃はそこにあこがれ、真似て動き続けることで、自分を満足させるように仕向けていたように思う。
そんなごっこ遊びが誤りだと突き付けられたのが、ある俳優訓練の場に参加するようになってからだ。

そこでは自分がいかに嘘を付いてきたかをこんこんと指摘され、どんなに身体の声に耳を貸さなかったかを、教え込まれた。
3年ほど通ったのち、ようやく身体が語っていることに気が付いてきた。
自分の身体はとてもわがままなものだった。でもそれは、ただ自然に反応しているだけなのだ。負荷がかかれば悲鳴を上げる。気持ちよければゆるむ。当然のことだ。
そういうことを黙殺し、おのれの気持ち良さ、自意識のために身体を使っていたら、無視し続けたら、そのうち声を上げなくなるのは当たり前なのだ。

今の身体は語ってくれる。少しは自分にもその声が聞こえるようになった。
具合の悪さに振り回され過ぎな気もするけど、未熟な自分ではそれを黙殺していたら演技なんて出来ない。また嘘で塗り固めることになってしまう。

でもきっと、世の中のハードワークでも素晴らしい作品を作り続ける人たちのように、身体の声も聞いて、しかしストイックにコントロールもしてという方法もあるのだろう。
40歳まであと数年と迫った今、ありがたいことに多忙な毎日がある。
これは、そのトップランナーたちの身体との向き合い方に近づけるように努めることのできるチャンスかもしれない。

今度は真似事ではない。
唯一無二の自分の身体の声を黙殺せず、耳を傾けて、そのコントロールの仕方を模索していく。