カラカラ

もうすぐ本番まで一ヶ月を切る。
これから照明や音響も含めた演出が必要になってくる。
キャストと違ってスタッフは稽古場に毎回いるわけではない。
限られた日にやってきて、ごく限られた打ち合わせで作り上げなければならない。それが、人を雇い仕事を依頼するということで。
しかし、作品づくりも、稽古の練度も、まだまだ五里霧中なわけで。

「間に合わないかもしれない」

という不安がいよいよ現実味を帯びてくる。

やっと確保した時間を使って机に向かっても閃きはやってこず、
酒を飲んでも気分は晴れず、
日課で気分転換に最適なトレーニングも満足に出来ず。

何をしていても作品にも演出にも自信が持てなくなってくる。
振り返ることが多くなり、時間を取られ、ますます進めなくなる。
ひどい悪循環だ。

一度、まっさらにしたい衝動に駆られる。

作ったときに感じていた面白みはどこへ行ったのか・・・


忘れることは素晴らしいことだと思う。
人を、故郷を、失敗を、成功を。
固執して身動きがとれなくなるよりははるかにいい。
ただそれは、動いていればこそ。
止まってしまったとき、忘れ続けていると、いずれ何もなくなってしまう。
供給を断たれ、すがる過去も経験もない。
ただ、生きるに必要な行動を繰り返す。
それが悪だとは思わない。
でも、自分は嫌だ。

減り続ける時間、その貴重な時間を確保し使っても解決しない。
必要なのはなんなのか。気分転換も試行錯誤もしてきた。
でも、考え続けることでしか閃きは訪れないのも知っている。
たぶん、今は苦しい時というだけなんだろう。

何も生めなくても、頭を使い続けるしかない。
今日も机に向かう。